民泊の営業日数と平日制限|条例がある60自治体の一覧と調べ方
【データ更新日: 2026年9月26日】
民泊(住宅宿泊事業)の営業日数は年間180日が上限と知られていますが、それとは別に自治体の条例で「この区域では、この期間は営業できない」と定められている場合があります。観光庁の公表では、実施制限の条例を持つ自治体は全国で60。物件を買ってから気づくと収支が崩れる項目です。民泊運営代行10年以上の民泊サポートが、どの自治体が何を制限しているか、自分の物件が該当するかの調べ方をまとめました。
▼ 先に結論
- 年間180日は全国一律の上限。条例の制限はそれとは別にかかるので、両方を満たす必要があります
- 制限の条例を持つ自治体は60(都道府県19・市区41)。東京23区は20区が制定済みで、墨田区・北区・江戸川区は制定していません
- いちばん多いのは「住居専用地域は平日だけ営業できない」型。新宿区・大阪市などがこれで、180日を使い切れません
- 京都市は住居専用地域での営業可能期間が年間約2か月だけ(1月15日正午〜3月16日正午)。全国でもっとも厳しい部類です
- 多くの自治体で「家主居住型なら制限しない」という除外があります。同じ物件でも運営の形で結論が変わります
① 180日の上限と、条例の制限は別物
住宅宿泊事業法では、年間の宿泊提供日数の上限が180日と定められています(毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までで計算)。これとは別に、法第18条が都道府県等に対して「条例で区域を定め、期間を限って住宅宿泊事業を制限できる」と認めています。
営業できる日数は、2つの条件を両方満たした範囲
1段目:法律(全国一律)
年間180日が上限。どの自治体でも同じです
2段目:条例(自治体ごと)
指定された区域では、定められた期間は営業できません
たとえば土日しか泊められない区域では、宿泊できる日が年間110日前後にとどまります。180日という数字は、この場合まったく使い切れません。
投資の判断でよくある失敗は、180日で収支を組んでから区域の制限に気づくことです。順番は逆で、先に区域と期間を確認してから、そこに180日をどう当てるかを考えます。
② 条例を制定しているのは60自治体
観光庁の民泊制度ポータルサイト「各自治体の窓口案内(条例等の状況等)」で、住宅宿泊事業の実施制限に係る条例を制定している自治体が公表されています。2026年9月26日時点では次の60自治体です。
| 北海道・東北 | 北海道/岩手県/山形県/福島県 |
|---|---|
| 関東 | 群馬県/神奈川県 |
| 中部 | 新潟県/長野県/岐阜県/静岡県 |
| 近畿 | 三重県/滋賀県/京都府/兵庫県/奈良県/和歌山県 |
| 中国・四国 | 島根県/高知県 |
| 九州・沖縄 | 沖縄県 |
| 北海道・東北 | 札幌市/仙台市 |
|---|---|
| 関東 | 川口市/東京23区のうち20区(千代田・中央・港・新宿・文京・台東・江東・品川・目黒・大田・世田谷・渋谷・中野・杉並・豊島・荒川・板橋・練馬・足立・葛飾)/八王子市/横浜市 |
| 中部 | 金沢市/名古屋市 |
| 近畿 | 京都市/大阪市/堺市/寝屋川市/高槻市/神戸市/姫路市/尼崎市/西宮市/明石市/奈良市 |
| 中国・四国 | 倉敷市/高知市 |
| 九州・沖縄 | 那覇市 |
東京23区で条例がない3区
墨田区・北区・江戸川区は、実施制限の条例を制定していません。この3区では曜日や期間による制限はなく、法律どおり年間180日まで営業できます(他のルールや、マンション管理規約の扱いは別途確認が必要です)。
なお、県が条例を定めていても保健所を置く市(政令市・中核市など)や東京23区は、その区域について独自に条例を定められます。たとえば大阪府内でも、大阪市・堺市・寝屋川市・高槻市はそれぞれ別の条例です。「県を見れば分かる」とはならない点に注意してください。
③ 制限のかかり方は4つの型
条例の中身は自治体ごとに違いますが、収支への影響という観点では次の4つに分けられます。
型A 平日が営業できない
新宿区・大阪市(学校周辺)・札幌市 など
「月曜正午〜金曜正午」型なら金・土・日の3泊(年間約156日まで)、「土日祝を除く期間」型なら年間110日前後。いずれも平日の需要は取れません。
型B 季節で営業できる期間が限られる
京都市・滋賀県(草津市の一部)など
年間のうち決まった時期しか営業できません。京都市は住居専用地域で年間約2か月と、影響がもっとも大きい型です。
型C 通年で営業できない
大阪市(住居専用地域)
区域に入ると全ての期間が制限対象。事実上その物件では民泊ができません。ただし除外の条件があります(次章)。
型D 家主居住型なら制限しない
北海道・札幌市・長野県・大阪市・京都市 など
上のA〜Cに当たる区域でも、家主がその家に住んでいれば制限を受けないという除外です。逆に言えば、投資用の物件ほど制限を受けます。
型Dは見落とされがちですが、実務ではいちばん効きます。「オーナーは遠方、運営は委託」という一般的な形は、多くの条例で制限を受ける側に分類されるためです。
④ 主要自治体の制限内容
問い合わせの多い自治体について、条例の本文で確認した内容をまとめます。
| 自治体 | 制限される区域 | 営業できない期間 |
|---|---|---|
| 新宿区 | 住居専用地域 | 月曜日の正午から金曜日の正午まで。住居専用地域以外は曜日を問わず年間180日まで営業できます |
| 大阪市 | 第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域 ※幅員4m以上の道路に接する住宅の敷地がある区域は除く |
全ての期間 |
| 大阪市 | 小学校・義務教育学校の敷地の周囲100メートル以内 | 月曜日の正午から金曜日の正午まで |
| 京都市 | 第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域 | 3月16日正午から翌年1月15日正午まで(営業できるのは1月15日正午〜3月16日正午のみ) |
| 札幌市 | 市長が指定する小学校・中学校・義務教育学校・中等教育学校・特別支援学校等の敷地の出入口の周囲100メートル以内 | 土日祝その他学校で授業を行わない日を除く期間(=授業のある平日) |
| 札幌市 | 市長が指定する住居専用地域(低層・中高層の各2種)およびこれらに準ずる地域 | 土日祝および12月31日〜1月3日を除く期間(=平日) |
| 北海道 (札幌市以外) |
知事が指定する住居専用地域等と学校周辺100メートル。倶知安町は令和8年6月1日から区域が拡大、ニセコ町は学校周辺100メートル | 平日(区域により祝日・年末年始・学校の長期休業期間は除く) |
| 長野県 | 学校等100メートル/住居専用地域/別荘地/スキー場の周辺地域など7区分 | 月曜〜金曜(休日等を除く)ほか、区域ごとに規則で指定 |
| 滋賀県 | 草津市 野路東三丁目・四丁目・五丁目 | 日曜日の正午から金曜日の正午まで(祝日の前後・年末年始は除く) |
| 和歌山県 | — | 区域・期間の制限はなし。代わりに宿泊者がいる間の駐在が義務づけられています |
京都市の住居専用地域で泊められる期間(1年)
緑が営業できる期間、グレーが条例で制限される期間です
※ 家主が現に生活の本拠として使っていて、かつ住み始めてから届出までが3か月を超える場合と、市が認定した京町家での事業は、この制限を受けません。
「月曜正午〜金曜正午」型で泊められる日(通常の週)
新宿区の住居専用地域、大阪市の小学校周辺100mなどがこの型です
※ 正午が区切りなので、金曜チェックイン・日曜チェックアウトの2泊は成立します。月曜チェックアウトも、正午までに退出すれば制限にかかりません。
⑤ 自分の物件が該当するかの調べ方
条例の制限は物件の住所で決まります。次の3つを、できれば売買契約の前に確認してください。
確認の順番
STEP 1
用途地域を調べる。市区町村の都市計画課、または自治体が公開している都市計画情報の地図で分かります。住居専用地域なら要注意
STEP 2
学校・児童施設までの距離を測る。100メートル以内だと制限対象になる自治体が多くあります
STEP 3
届出先の窓口に確認する。区域は告示や規則で指定されるため、条例本文だけでは分かりません
※ STEP 3が決定打です。条例に「市長(知事)が指定する区域」とあるときは、告示や区域図を見ないと判断できません。
距離の測り方は自治体で差があります(敷地の出入口から測る/敷地境界から測る、直線距離/道のり)。学校・児童施設の100mルールと距離の測り方で、測定の手順と自治体ごとの違いをまとめています。
届出先の窓口は全国1,741市区町村の民泊の届出・相談窓口一覧から探せます。保健所ではなく観光部局が窓口の自治体もあるため、電話をかける前にご確認ください。
⑥ 観光地・リゾート地は別の注意が要る
需要の大きい観光地では、都市部とは違う形の制限がかかることがあります。エリア別の詳細は次のページでまとめています。
令和8年6月1日から制限区域が拡大。「観光」と名のつく地区まで対象です
スキー場周辺が制限区域。ただし白馬村は家主居住型なら制限しないと明記されています
届出窓口が保健所ではなく県の観光政策局。草津市の一部に期間制限があります
区域・期間の制限はない一方、徒歩10分以内の駐在が義務。無人運営はできません
山梨県は条例なし。曜日の制限はありませんが、町から騒音・駐車の対策を求められています
民泊の営業日数の制限によくある質問
Q. 条例のない自治体なら、年間180日をどう使っても自由ですか?
A. 実施制限の条例がなければ、曜日や季節による制限はありません。ただし届出の前に近隣住民へ説明を求めるなど、制限以外のルールを条例や要綱で定めている自治体は多くあります。また分譲マンションでは管理規約で民泊が禁止されていることがあり、この場合は条例と無関係に営業できません。
Q. 制限される期間に宿泊者がいたら違反ですか?
A. 制限されているのは「住宅宿泊事業を実施する(人を宿泊させる)こと」です。金曜正午チェックイン・日曜正午チェックアウトのように、制限期間にかからない形で予約を受ければ問題ありません。境目の扱いは自治体で異なるため、届出先に確認してください。
Q. 家主居住型にすれば制限を避けられますか?
A. 多くの自治体でその扱いですが、条件は自治体ごとに違います。京都市は「現に生活の本拠として使用」かつ「住み始めてから届出まで3か月超」という要件があり、届出直前に住民票を移しただけでは認められません。長野県は管理者の常駐でも除外される区域があります。名前だけ家主居住型にするのではなく、条文の要件を満たす必要があります。
Q. 旅館業の許可を取れば制限はかかりませんか?
A. ここで説明している制限は住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく条例のものなので、旅館業法の簡易宿所として許可を取れば適用されません。ただし旅館業は用途地域の制限(住居専用地域では原則営業できない)や、消防・建築の基準が民泊より厳しくなります。どちらが現実的かは、物件の条件次第です。
Q. 条例は変わりますか?
A. 変わります。北海道は毎年度、市町村の意見をもとに制限区域を見直しており、倶知安町は令和8年6月1日から対象区域が拡大しました。大阪市も令和4年4月1日に義務教育学校を追加しています。購入時に問題がなくても、後から区域に入ることがあります。
関連ページ
出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「各自治体の窓口案内(条例等の状況等)」、新宿区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例、大阪市住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例、京都市住宅宿泊事業の適正な運営を確保するための措置に関する条例、札幌市住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例、北海道住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例、長野県住宅宿泊事業の適正な実施に関する条例、滋賀県住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例、和歌山県住宅宿泊事業法施行条例(いずれも2026年9月26日確認)。区域の指定は告示・規則で定められるため、最新の内容は届出先の自治体にご確認ください。